京都 パート1
秀吉公の遺構と紅葉が見事に調和 ~北野天満宮~
全国約1万2000社の天満宮、天神社の総本社が、“北野の天神さん”と親しまれている京都の北野天満宮だ。
御祭神の菅原道真公は“もみじの錦 神のまにまに”と詠まれたように、紅葉もこよなく愛されたとか。境内の紙屋川沿いでは樹齢400年以上の「三叉の紅葉」など約350本のもみじと自然林が長い間大切に守られてきた。そのおかげで生まれたのが、色鮮やかな紅葉と豊臣秀吉公が築いた「御土居(おどい)」とが渾然一体となった素晴らしい錦秋の景観だ。高さ約5mの巨大な土塁は京の都を取り囲むように建造されたが、そのほとんどが現存しないだけに破壊を免れた貴重な遺構としても注目されている。
この御土居一帯を「もみじ苑」として、紅葉時の特別公開が始まったのは2007年から。朱塗りの太鼓橋・鶯橋や展望所を巡る遊歩道の静かな風情は格別だが、京都最古の花街・上七軒の舞妓さんが披露する舞やライトアップで華やぐ雰囲気も町衆に愛される天神さまならでは。秀吉公主催で前代未聞の北野大茶会が天正15年秋に境内で行われた史実にちなみ、利休好みの“麩の焼”を再現した茶菓子「北野大茶湯(きたのおおちゃのゆ)」での茶菓接待が受けられるのも古都らしい雅な計らいだ。
典雅な木造橋を渡って圧巻の紅葉を~東福寺~
東福寺は臨済宗東福寺派の大本山。国宝の三門や昭和期を代表する作庭家・重森三玲の枯山水など見どころが多い名刹は、京都を代表する紅葉の名所でもある。色付くと黄金色に輝く宋(中国)伝来の「三葉楓」が開山当初から植えられてきた渓谷「洗玉澗(せんぎょくかん)」一帯。晩秋になると鮮やかな極彩色に染め上げられて比類のない美しさとなる。
その紅葉を引き立てるのが「東福寺三名橋」と呼ばれる屋根付き木造橋だ。臥雲橋(がうんきょう)、通天橋(つうてんきょう)、偃月橋(えんげつきょう)。どの橋も禅寺らしい典雅な名と姿を持つが、なかでも紅葉スポットとして名高いのが通天橋だ。渓谷の高低差が生む迫力ある景観で、回廊風の格調高い空間から見えるのは紅葉だけ。これほど立ち去りがたいと思える橋は、世の中にはそう多くはないはずだ。
ただ東福寺にはまだ訪れたい場所がある。国指定名勝の本坊庭園もそのひとつ。重森三玲が手掛けたどこか遊び心を感じる枯山水と紅葉のコラボレーションを、心静かに眺めるひとときも良き思い出となりそうだ。
*このページはOne Harmony会員誌 和らぎ 第40号より引用しています。